ダイエットに失敗する人の多くの人は、「ダイエットは明日から! 今日は最後のラーメンを食べよう!」「さっきジムで運動したから、ビールくらい飲んでも大丈夫!」と言います。

以前の私も全く同じでした。

運動は好きなので「やせるために!」と早朝からジムに行きます。そして仕事の後には、同僚と「朝、ジムに行ったから!」と焼肉を食べていました。

また残業で疲れているときは、「今日は仕事を頑張ったから好きなものを食べよう!」と夜中にファーストフードやお菓子を食べていました。そのため、「頑張ってダイエットをしていてもやせない」というように悩んでいました。

そして最終的には、なかなか思うように体重が落ちないためダイエットをやめてしまいます。

このような「いいことをしたから、ちょっとくらい悪いことしてもいいや」という考え方が起きる現象のことを、心理学では「モラル・ライセンシング効果」といいます。

多くの太っている人は昔の私と同じように、このモラル・ライセンシング効果によるデブ思考に陥りがちです。しかし、モラル・ライセンシング効果が働くきっかけを知り、その対策さえ実践すればダイエットが楽になります。

今回は、モラル・ライセンシング効果が起こってしまうメカニズムとその対策について説明します。

モラル・ライセイシング効果とは?

モラル・ライセンシング効果とは、「いいことを行うと悪いことをしたくなる現象のこと」をいいます。

実は多くの人が、無意識のうちにモラル・ライセンシング効果の影響を受けて、ダイエットに失敗しています。そして全くそんな現象が起きていることに気が付いていません。

そして、「自分はダイエットすらできない、意志力のないダメ人間だ」と思い込んでしまいます。しかしそれは誤った考え方であり、人間から活力を奪ってしまう考え方のひとつなのです。

そもそも人間には意志力などありません。ただ、知識がないために具体的な対策や行動ができていないため、失敗を繰り返してしまうのです。

モラル・ライセンシング効果のような日常の小さな心の動きには、一定の法則が働いています。

毎日忙しく生活をしていると、自分自身の心の動きに気づくことはなかなかできません。

しかし、それに気づいて行動を変化させることで、今までできなかったようなことができるようになるのです。

ダイエットにおいても、このような心理学を学んで実践することで目標達成ができるようになるのです。

なぜ「モラル・ライセンシング効果」は起きてしまうのか?

前述のようにモラル・ライセンシング効果とは、「いいことをすると悪いことをしたくなる現象」のことです。

一見、人間に「いいことを行いたい」という善の心があるのは理解できても、なぜ「悪いことを行いたくなる」という相反する心がこの現象で生まれてしまうのか理解できない人も多いでしょう。

ではなぜ、人間はこのような矛盾する心の動きが出てきてしまうのでしょうか?

コントロールされたくないという欲求が原因

人間には、「道徳的行い(モラルのある行動)をすることはいいことだ」という考えがあります。ここでいう道徳的な行いとは、物事を善(良い行い)と悪(悪い行い)に分けて善を行うことをいいます。

子供の頃に「お天道様が見ているから、悪い行いはしてはいけない」「悪いことをするとバチが当たる」などと言われた人もいるでしょう。

このような教育の背景により、人間は道徳的な行いをすると気分がよくなります。そのため、人間には「道徳的な正しい行動をしたい」という欲求を持つようになります。

しかし一方で、人間には「何にもコントロールされたくない! 自由に好き勝手に行動したい!」という欲求が存在します。

この相反する欲求が、モラル・ライセンシング効果を引き起こします。

道徳的な行動とは、自由とは真逆にある「ルール(道徳)に従った不自由な行動」です。そのため、ルールに縛られコントロールされている感覚は居心地が悪いと感じます。そして、その状況から逃げ出すために悪い行いをしてしまうのです。

道徳的な正しい行動がしたい + コントロールされたくない = モラル・ライセンシング効果が起きる

例えば「運動したからお菓子を食べてもいいや!」という考えを見てみると、とてもわかりやすいです。

まず「運動をすること」はダイエットで成功するために、しなければいけないこと(ルールや決まりごと)のひとつになります。

そして「お菓子を食べること」は、「そのダイエットを失敗に導く、してはいけないこと(コントロール外の自由な行動)」になります。

この矛盾する心の動きを満たすために、モラル・ライセンシング効果が起きてしまい、ダイエットが失敗してしまうのです。

これを食い止めるためには、まずモラル・ライセンシング効果が起きるきっかけを知る必要があります。

モラル・ライセンシング効果が起きる3つのきっかけ

モラル・ライセンシング効果が起きるきっかけは、主に3つあります。

「良い行いをしたとき(行動)」「良い行いをしたことを思い出したとき(想起)」そして「良い行いを考えついたとき(構想)」です。

そしてこの3つに共通する感情は、道徳的な行いからくる「気分の良さ」です。この気分の良さがきっかけとなり、「ちょっとぐらい悪い行いをしてもいいか!」と間違った行動に走ってしまうのです。

では、ひとつずつ詳しく説明します。

モラル・ライセンシング効果のきっかけ1:良い行動を実行する

良い行動は、もっとも多い原因のひとつです。それは実際に行動をしているため、ダイエットを怠ける言い訳にしやすいからです。

下記はダイエット中によく起こりがちなモラル・ライセンシング効果の言い訳をまとめたものです。

  • ジムに行ったから、お菓子を食べてもいいや!
  • サウナで汗を流したし、今日はビールを飲もう!
  • たくさん歩いたし、今日は筋肉トレーニングをしなくていいや!
  • 昨日はケーキを我慢したから、今日は食べてもいいや!

私もよく友人とジムに行った帰りに「運動したから」と言って、近くの飲食店で大好きなワインを飲むことがよくありました。

これは、自分が「ダイエットにとっていいと思っている行動した」ことで気分がよくなり、モラル・ライセンシング効果を起こすきっかけになっているのです。

モラル・ライセンシング効果のきっかけ2:良い行動したことを想起する

モラル・ライセンシング効果は「過去に行った良い行動を思い出す(想起する)」ことでも起こります。

とある心理学の研究では、下記のような結果が見られました。

さまざまな人に「寄付金を募る」という研究を行います。

この研究からわかったことは、過去に高額の寄付をしたことを思い出した人ほど、寄付した金額を思い出さなかった人に比べて、寄付金の額が6割も減ったのです。

このように人間は、過去に自分が行った良い行動を思い出しただけで、「今回はこれくらいでいいや!」と考えてしまいます。

ダイエット中では、下記のような考えがこれに当てはまります。

  • 2kg体重が落ちたし、少しぐらい好きなもの食べてもいいや!
  • 以前ダイエットに成功したことがあるし、今はサボってもいいや!
  • 先週はたくさん運動したし、今週は少し運動を減らしてもいいや!

私も以前は、このような考えをよくしていました。

例えば、下記は私のダイエット中の体重変動表です。

体重が60kgから57kgまでぐんと落ちたことで気が緩み、「3kgやせたし、お菓子を食べちゃおう!」とどか食いしてしまいます。そして、リバウンドすることが頻繁にありました。

これは一度やせる経験(成功体験)をしたため、「またやせることができる」と安易に考えることが原因です。

このように人間は、過去の成功体験を想起して一時的に気分が良くなり、「少しくらい悪いことをしてもいい」と考えてしまうのです。

モラル・ライセンシング効果のきっかけ3:良い行いを構想する

最後のきっかけは、良い行いを考えつく(構想する)だけでも、モラル・ライセンシング効果が働いてしまうということです。

これは、多くの人が経験する「計画倒れ」を思い出してみるとわかりやすいです。

例えば、多くの受験生は一生懸命「学習プラン」を作ります。そしてプランを作り終えると満足してしまい、結局遊んでしまって計画を実行に移せず計画倒れになってしまいます。

これは「学習プランを作る」という良い行いを考えている間、勉強したような良い気分になってしまうからです。

やせたい人が「ダイエット始めよう!」と決断して良い気分になり、「これが最後のチョコレートだ」と言ってなかなかダイエットがスタートできない場合も、この心の罠にかかっているのです。

これまで述べた3つのきっかけである「行動・想起・構想」がモラル・ライセンシング効果を引き起こすと考えると、ダイエットを実践できないような気になってしまいます。

何か目標を達成するためには、この3つは必ず行う必要があるからです。しかし前述のように、対処方法を知り実行することで、この問題は簡単に解決します。

モラル・ライセイシング効果に対する3つの対処方法

モラル・ライセンシング効果はどんな人にも起きています。

ダイエットだけではなく、勉強や仕事など「何か目標を達成しよう」とするときに起きます。

もちろん中には、モラル・ライセンシング効果の罠にかかることなく、目標を達成する人も多く存在します。コツさえつかめば、誰にでもできることなのです。

では、その対処方法をひとつずつ紹介していきます。

対処方法1:目標達成に道徳的な考え方を持ち込まないこと

前述では、モラル・ライセンシング効果が起きてしまうメカニズムには、「良いか?悪いか?」という道徳的な考え方が大きく関係してくると説明しました。

では、道徳的な正しい行動をすると、相反する悪い行動をとってしまうのであれば、「自分の善悪の判断基準(道徳的考え)は、目標達成には全く関係がないことだ」ということを理解する必要があります。

要するに、自分の道徳観を疑って「善悪とは関係ない」と悟るということです。

悲しいことに「やせていることが良いこと」と考えている人ほど、モラル・ライセンシング効果は働きやすく太りやすいのです。

やせることを「善」と考えるため、「悪」である太る行動をしてしまうからです。

そもそも、体型に善悪をつけること自体に疑問を持つべきです。世の中には、太っていても幸せな人が多く存在します。とある国では、やせているとモテません。太っていることが良しとされるのです。

このように考えると、「やせていることがいいこと」とは一概には言えません。

より具体的な実例を元に説明します。

どか食いは本当に悪い行いなのか?

ダイエットをしている人であれば、「どか食いは悪いこと」と考えます。しかし、この考え方は間違っています。

実際に私は、一定の目標体重(12kg減量した段階)に達した後に、さらにやせるためにチートデイ(どか食いをあえて行うことで脳を騙してやせる方法)を行うようになりました。

下の写真のように、計画的にチートデイを決めてどか食いをしています。

そして現在では、さらに5kg減量することに成功しました。

このことからもわかるように、私にとって「どか食い(悪い行い)」はダイエットの目標達成において、決して悪いことではありません。むしろ、必要なことだったのです。

しかし、多くの人が物事に善悪をつけてしまうことで、本当に必要であることがわからなくなり、正しい判断ができなくなるのです。

善悪の判断基準ほど曖昧で、いい加減なものはありません。そのため簡単に判断を誤ってしまうのです。

他にも、「勉強や仕事をするとは良いことで、しないことは悪いことだ」と考えると、少し単語学習したり残業で頑張ったりするだけで、サボりやすくなります。

実際に、机に向かって勉強ばかりしているガリ勉タイプの学生よりも、部活ばかりしていたスポーツ学生の方がIQ(頭の良さを数値化した知能指数)が高く、集中力が優れているということがわかっています。

そのため、受験のギリギリまで部活に明け暮れていた学生が、少し勉強しただけでいい大学に受かってしまうことがよく起こります。勉強をしないことは悪いことではないのです。

またヨーロッパのとある国で、仕事時間を短くして休日を多くするような政策をしたことで、「GDP(国内総生産量)が増加し国が豊かになった」というデータもあります。仕事を休んでもいいのです。

一度、自分の行動や考えに善悪の判断を下していないか確認しましょう。

目標に対して真面目になりすぎると失敗する

目標達成に道徳の考えを持ち込む人は、何に対しても真面目に考えすぎる傾向があります。そのため、「あれはいいけど、これはダメ!」と考えてしまい判断を誤ります。

あれこれ考えず、気楽に考えてダイエットに取り組む方がいい結果が出やすいです。

例えば私の場合、ダイエットを行うことを「やせるための人体実験」と呼んで、遊びの一環と考えるようにしています。

どんな実験内容であっても善も悪も関係なく、結果がすべてです。極論をいえば、ダイエットをただの遊びと考えているため、「結果的にやせられるなら何をしても構わない」と考えています。

どか食いなどを悪いことと考えず手段と捉えています。

このように、気楽にゲーム感覚で行うことで、自分に合っている正しい判断ができるようになります。

対処方法2:なぜダイエットをしているのかを思い出す

ふたつ目の対処方法は、「なぜダイエットをしているのか」を考えることです。

人間は、物事がうまくいっているときほど気が緩みます。うまくいっているときこそサボらずに、本来の目的を思い出すことで、正しい判断をすることができるのです。

心理学の研究で、うまくいっているときほど長期目標を意識し、逆に、うまくいっていないときはタスクフォーカス(目の前のやるべきこと)を意識することで障害を乗り越えやすくなることがわかっています。

例えばあなたの目標は「夏に水着をカッコ良く着こなすこと」だったとします。そしてダイエットも順調に進んでいるとしましょう。

そんなときに、目の前のチョコレートが食べたくなって「食事制限を頑張ってるし、今日くらいいいか!」と食べてしまうと、ダイエットは失敗します。

しかしそこで、「私の目標は夏に水着をカッコ良く着ることだ!」と思い出せば、誘惑を回避することができます。

目標を紙に書き貼っておくと効果的

私の場合、子供の頃から自分の下半身の大きさにコンプレックスがありました。人間は、歳をとるにつれて代謝が悪くなり太りやすくなります。私も30歳を過ぎてからどんどんと洋梨のような体型になっていきました。

あるとき、「私は一生デブでいたいのか? 人生で一度くらい理想の体型になりたい!」という思いからダイエットを始めました。そして、いくつか目標を決めました。

そして私は目標を忘れないように、紙に書いて体重計や鏡の前に貼っておくようにしました。

写真の左は、その月に減らす体重目標など短期的な目標で、右は長期的な目標です。

朝晩、鏡を見るたびに目に入ってくるので目標を忘れることがありません。

このようにして覚えた目標は、誘惑を目の前にしたときに「体重40kg代になるために頑張ってきたんだった! これを食べてしまったら目標から遠ざかるからやめておこう」と正しい判断ができるようになります。

このように、ダイエットを何のために行っているのかを思い出すことは、ダイエットを成功に導きます。

対処方法3:「挽回のチャンスはない!」と考える

最後の対策は、「一度でも誘惑に負けたら、2度と挽回できない」と考えることです。

モラル・ライセンシング効果が起こるきっかけは、「何かを成し遂げたい」と考えただけでも起こります。ダイエットをすると決めた時点で、モラル・ライセンシング効果が起こるきっかけができます。

そのため、「まぁ、これくらいサボってもいいか!」「2kg減ったし、ちょっとくらい食べても大丈夫!」と必ず誘惑が起きます。そしてリバウンドが起きてしまうのです。

私の場合もこのような甘い考え方から、ダイエットに失敗し続けリバウンドを繰り返しため、体重が70kgまで増えました。

実際にしっかりと食事制限をすれば、簡単に2〜3kg体重を落とすことができます。そして「こんなに簡単に体重が落ちるなら、少しくらい誘惑に負けてもまた頑張ればいい」と考えます。

しかし一度でも誘惑に負けてしまうと、そのままダラダラとダイエットをしない日々が続き、あっという間にリバウンドします。

誰でも「挽回のチャンスがある」と思うと、簡単に判断を誤ります。逆に「今、誘惑に負けたら、もう2度とチャンスはない」と決断すれば頑張ることができます。

例えば、お金に余裕のある家庭の受験生であれば、1度くらい受験で失敗しても「1浪して、予備校に通ってもいいや」と勉強をサボりがちになります。挽回のチャンスがあるからです。

しかし、貧乏な場合は予備校に通うこともできません。挽回するチャンスはなく、1回しかない受験でなんとかして合格する必要があります。

すると、「勉強サボりたいな。 でも今サボったら大学にいけなくなる」と考えてサボることができなくなります。

今、この瞬間が最もやせやすい!

ダイエットにおいても、一番簡単にやせることができるのは未来ではなく、今しかありません。

前述のように、人間は年齢とともに代謝が悪くなりやせにくくなります。人間は毎日歳をとるため、明日よりも今日の方がやせやすいのです。

そう考えると「ダイエットは明日から!」「今日くらい、サボってもいいか!」と考えていては、どんどんやせにくい状況になっていきます。

このようにダイエットをサボりたくなったときは「今誘惑に負けたら、後がない!」と考えるようにしましょう。

まとめ

これまで述べたように、「いいことをすれば、悪いことをしたくなる」というモラル・ライセンシング効果は誰にでも起こります。

人間は誰でも、ダイエットを頑張ったり、頑張ったことを思い出したりした時点で、いい気分になり「少しぐらいサボってもいいか!」と考え誘惑に負けやすくなります。

また、「ダイエットをしよう!」と考えただけでもいい気分になるため、多くの人はこの心理作用に気がつかずにダイエットに失敗します。

この心理作用を回避する方法を理解して実行することで、ダイエットがより簡単に実践できるようになるのです。